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「上の、と申しますと」 程普が重ねて孫策に訊ねる。 「賊ではない」孫策は答えた。 「軍、おそらく訓練を受けた軍隊だ」  孫策がそう言った直後、船尾の方から、闇に溶けてしまいそうなほど真っ黒な甲冑を着けた、長身長髪、筋骨隆々の男が近づいてきた。軍中では太史慈と並ぶほどの豪将、祖郎だ。 「見てみたいな」孫策は祖郎がすぐ傍まで来たところで、そう言った。 「あれですか?」呂範が謎の船団に右腕を伸ばす。 「指揮している人物ですね」 「流石呂範」孫策はかしわ手をならし、声を弾ませた。 「ご名答だ」  呂範が小さく息を吐く。 「私は孫家の家中の人間以外では、初めて孫伯府の配下になった男でございます」 「そうだな」孫策が目を輝かせて頷く。 「殿の性格は家臣団の中では誰よりも把握していると自負しています」 呂範は口髭を蓄えた優しさ滲む表情を少しだけ曇らせ、 「太史慈と祖郎を護衛に着ける事が条件でございます」 と、続けた。  孫策は呂範が言い終わるか終わらないかという間で右側の走衝艦(ソウショウカン)という船体が細長い船に飛び乗った。走衝艦は他の船に比べて船進速度が早い。 「太史慈、祖郎」孫策が右側の船から両手を振る。 「早く来なければ、俺は1人で行ってしまうぞ」
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