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「あれか」前方、煌々と揺らめくかがり火を眺めながら、孫策は呂範に訊ねた。 「はい」呂範が頷く。「この先の江路は狭くなっています。往けぬ事はないのですが、得体の知れぬ船の脇を通るのは危険が過ぎると判断し、船を停泊させた次第でございます」  岩山に挟まれたこの辺りは確かに江路が狭い。かがり火の数から察するに謎の船団は中型船が10隻前後、人員はおそらく千人に満たない程度か。戦闘になった場合を想定する。数では圧倒的に孫策軍が有利だ。が、それはもう少し広い場所であればという話である。この狭い場所では1隻対1隻の様相が濃い。数の有利は意味を為さない。  これら全てを想定し、ここに布陣しているのなら、あの船団を指揮している人物は相当の知恵者だ。孫策はあの船団を指揮している人物を見てみたいと思った。  程普が後方の船からやって来た。程普は出っ張った頬骨をひくつかせ、「何者だ」と長身を折り、船団に目を向けた。 「江賊か」 「いいや」孫策は程普の言葉にかぶりを振った。 「江賊ならすぐに襲いかかってくるだろう。程普よ、あれはもう少し上の奴らだ」
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