夜の蝶

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「今夜は君も付き合え。たまには夜遊びに。」  そう言われ社長に連れて行かれたのは、高級クラブだった。 シャンデリアに、煌びやかなドレス、高級そうなお酒、お偉そうな男性客。 「いらっしゃいませ、石橋社長。あら今日は珍しく女性とご一緒ですか?」 着物姿がよく似合う40代ほどの女性が、入り口で挨拶し、席に案内しながらこちらを見て微笑んだ。 隙のない笑顔だと思う。 「社会勉強がてらに、な。」 確かに、高級クラブの接客は知っていて損はない。 お偉い方相手にそつなく、飽きなく付き合える話術と知識、振る舞いは凄いと聞いている。 「飲むだろ、高梨も。」 が、この悪戯っぽい社長の笑みには裏がある事を知っている。 「はい、いただきます。」 同性愛者という事を知っている社長は、期待しているのだ。私がどんな反応をするのか。 「石橋社長、今日はラッキーですよ。美々が出勤してます。」 「おー、美々か。久しぶりじゃないか。空いてるのか?」 「はい、お待ちください。準備しておりますので。」 「高梨、運が良かったな。ここの隠れ嬢に会えるぞ。うっかり惚れるなよ。」 「それは楽しみですね。」 どうやら、余り出勤はしないものの、とても美人で人気のあるキャバ嬢らしい。 偉くご機嫌になった社長が、濃いめの水割りを渡してきた。 (このタヌキじじい、、、) 心の中で悪態をつきながら、チビリとそれを口にした。
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