101人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
「今夜は君も付き合え。たまには夜遊びに。」
そう言われ社長に連れて行かれたのは、高級クラブだった。
シャンデリアに、煌びやかなドレス、高級そうなお酒、お偉そうな男性客。
「いらっしゃいませ、石橋社長。あら今日は珍しく女性とご一緒ですか?」
着物姿がよく似合う40代ほどの女性が、入り口で挨拶し、席に案内しながらこちらを見て微笑んだ。
隙のない笑顔だと思う。
「社会勉強がてらに、な。」
確かに、高級クラブの接客は知っていて損はない。
お偉い方相手にそつなく、飽きなく付き合える話術と知識、振る舞いは凄いと聞いている。
「飲むだろ、高梨も。」
が、この悪戯っぽい社長の笑みには裏がある事を知っている。
「はい、いただきます。」
同性愛者という事を知っている社長は、期待しているのだ。私がどんな反応をするのか。
「石橋社長、今日はラッキーですよ。美々が出勤してます。」
「おー、美々か。久しぶりじゃないか。空いてるのか?」
「はい、お待ちください。準備しておりますので。」
「高梨、運が良かったな。ここの隠れ嬢に会えるぞ。うっかり惚れるなよ。」
「それは楽しみですね。」
どうやら、余り出勤はしないものの、とても美人で人気のあるキャバ嬢らしい。
偉くご機嫌になった社長が、濃いめの水割りを渡してきた。
(このタヌキじじい、、、)
心の中で悪態をつきながら、チビリとそれを口にした。
最初のコメントを投稿しよう!