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私にとっての島は、迷った時の道標となる灯台のような存在。
今、生活の基盤となるあの場所は、生きていく為には必要不可欠な存在。
そう。
私には、どちらも大切――――だったのに。
「もう、やだ」
その独り言は、空を優雅に飛ぶカモメ達に届く訳もなく、誰も居ないこの場所に虚しく響く。
海風が私の頬に触れる。
今年のゴールデンウィークは世間を賑わす大型連休となり、その休みを利用しお正月以来の帰省となったこの島に、私は数時間前に降り立った。
いつも飛行機から見慣れた光景が目に入ると、懐かしさと安堵感から胸が踊るのに、今日の私は、無性に泣きたくなったのは気のせいなんかじゃない。
本当は、帰省する予定はなかったの。
本当は、此処とは正反対の北海道に行くはずだった。
今頃、グループの皆は――――
はぁ……
重苦しい溜息は風に舞うことなく、私に纏わりつく。
数時間前まで最も高い位置から見下ろしていた太陽は、時間の経過と共に傾き、雲からこっそりと顔を覗かせるように控えめに私を見ている。
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