第1章

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何でも構内で不審物が発見されたとかで、 安全が確保されるまでシャッターが開かず、 1時間近く地上で大勢の帰宅の途につく人々が待ちぼうけを食らったことがある。 地下鉄が時間通りに来ることはまれで、 また時々、 駅を1つ飛ばして運転したりする。 そして、 しょっちゅうストライキを起す。 毎日何が起きるのかが分からないのがロンドンの地下鉄だと言えよう。 1分遅れてもアナウンスする正確無比な日本の地下鉄とは比較にならない。 ある年のストライキの当日、 セントラル・ラインのウエスト・アクトンに住んでいた私は、 たまたまホワイト・シテイ駅(国営放送BBCの最寄り駅)まで臨時列車が走ることになったので、 ホワイト・シテイまで臨時列車で行き、 そこからバスで街の中心部へ出ようと試みたが、 来るバス、 来るバス満員でいつまで経っても乗車できなかった。 バスを諦め、 ホワイト・シテイから事務所のあるリージェント・ストリートまで歩くことにした。 途中、 壮重な建物で名高い自然史博物館や映画「ノッティン・ヒルの恋人」で有名なノッティン・ヒルゲート駅、 ランカスター・ゲート駅と地下鉄駅に沿って歩き、 広大なハイド・パークの横を通りながら、
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