天使と出張

3/5
733人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
休憩まで入れて合計8時間の幸せは、とうとう終わりを迎えた。だからと言って、がっかりはしないぞ。何しろ、今からもっと天国が待っているんだ。 …………湯上がり浴衣の佐倉さん。 …………ほろ酔いの佐倉さん。 それから佐倉さんが眠ったら、天使の寝顔を堪能しよう。それが良い。 だけど、帰りの運転の為に少しは寝ないと不味いし。ずっと見ていたいけれど、3時間で我慢しよう。うん、それが良いな。 「…………真崎君。さっきから、心の声が漏れています。もう、恥ずかしいから止めて下さい。後、寝顔見るのは禁止です」 真っ赤な顔でプイッと窓の外を眺める佐倉さんに、悶えまくる僕。でも駄目だ、佐倉さんがちょっと怒っていらっしゃる。怒っている姿も今直ぐかぶり付きたい程可愛らしいけれど、これ以上機嫌を損ねたら大変だ。 別々の部屋にしますなんて言われたら、立ち直れない。 「佐倉さんっ、失礼しました。ちょっと舞い上がりすぎて、変なことを口走りましたが、大丈夫ですから!僕は佐倉さんが嫌がる事はしませんし!」 自信満々に言い切った僕に、佐倉さんがクスクスと笑い出した。 「…………本当に、真崎君は面白い人ですね。こんなおじさんの寝顔なんて見てどうするんですか」 えっ。見たら記憶に焼き付けて、何度も脳内再生するに決まっているじゃないですか。…………ドン引きされるから、言いませんが。 佐倉さんはどうやらツボに嵌ったらしく、旅館に到着するまでクスクスと笑い続けていた。 …………ああ、佐倉さんは笑い方まで天使です!
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!