第1章

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私は今、目の前で起こっている事が理解できないままもうすぐ5分が経とうとしている。 まずこんな事になった経緯から話していこうと思う。私は高校1年生の天ヶ瀬柚子(アマガセユズ)。今まではずっとクラスの地味な方の子達と居て、ずっと中心の子達に気をつかいながら中学生活を送っていた。それなりに楽しかったけど、やっぱりなんだか違う気がしてた。私はもっと自由にしたかったんだと思う。それで、思い切って高校は私を知ってる人が誰も居ない京都の学校に行って一人暮らしをして、自分の好きなようにしようと思ったんだ。 でも、現実はそんなにうまくいかなかった。私は初日からやってしまったのだ。私の高校は中高一貫校で、すでにグループはしっかり固まっていてこう高校からの編入はほとんど居なくて、居ても教室の隅の方で静かにしているだけだった。うちの学年にはみんなから女王様と呼ばれている高橋さんがいた。高橋さんとはフルネームは高橋千夏、容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能、という完璧な子でみんなから一目おかれていてみんな彼女に対しては敬語で神的な存在だった。しかし、私はそんな事はつゆ知らず高橋さんにぶつかってしまい、しかもタメ口で「あっ、ごめんごめん笑」と言ったのだ。高橋さんはそんなに怒っていなかったが、周りの取り巻きの女子達が激怒して、クラスのほとんど全員が私の事を無視するようになった。私に話しかけてくれる人といえば私と同じ高校からの編入で入った子達の数人だった。でも、その子達も一週間もすれば話しかけてくれなくなって私は高校に入ってわずか一週間にきてクラスから孤立してしまった。それでも、学校に行き続けているのは無理言って京都の高校に行かせてもらっている両親に心配をかけたくないからだ。それに、私は帰りに寄り道をして私だけの秘密の丘で夕焼けを見る事が大好きだった。そこで1人で静かにきれいな夕焼けを見ていると1日の嫌な事が全部消えてなくなっていって、また明日から頑張ろうっていう気持ちになれるから。 長い長い説明をしている間にもう10分はたっただろう。今起きている事を簡単に説明すると、いつものように秘密の丘で夕焼けを眺めていると私はつい寝てしまって、ハッと飛び起きた私の目に飛び込んできたのは深い深い森の中だった。しかも、目の前には瞬き一つせず私を見つめる高橋さんが居た。まるで愛しい人を目に焼き付けるかのように。
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