プロローグ

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 こんな日が来るなんて、思ってもいませんでした。  もう、恋なんてしないと思っていました。  ずっと、このままだと思っていました。  でも、あなたはいつの間にかわたしの心に入りこんでいました。  入っただけではなく、いつしか大きく育っていました。  あなたを想う気持ちが、いつか形をとりました。  コイゴコロ、という形をとりました。  靄がかかっていたようなわたしの毎日は、あなたのおかげで、色を取り戻しました。  あなたはまるで、雲を吹き飛ばす風のようでした。 暖かさを残して、少し冷たい、秋風。  わたしにはそう思えました。  だからわたしは、はじめて言うことにしました。  ――あなたが、好き。  知っていました。  ――風が吹き去っていくものだ、ってちゃんと知っていました。  でも、ちゃんと言いたかったんです。  ――あなたが、好き。  この気持ちが、どこまでも本物だったから、言いたかったんです。  たとえ、風が吹き去ってしまっても。  ――あなたが、好き。  その気持ちは、否定してはいけないものだから。
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