第1章

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通学路を、道なりに歩く。朝の並木通り。深緑を宿した細い枝が、そよ風に揺らされて、葉音を立てていた。木々の間から射し込む木漏れ日が、アスファルトに影を落としている。 俺の前を歩く生徒。木漏れ日でできた影が、生徒の体に明暗を映し出していた。 穏やかだけど退屈な、朝の風景だ。俺の周りには、自分と同じ制服を律儀に着こなした生徒の群れが、密集して歩いていた。道幅は狭い。歩道と、車1台通れそうな車道が、ガードレールを挟んで一本設けられていた。 一方通行の道路だから、車はほとんど通らないし、自転車の通行も禁止されている。狭く設けられてた道幅の一方で、深緑に満ちた木々と、鬱蒼とした茂みが、この道を取り囲んでいた。 並木通りというよりは、通り並木という呼び方の方が、似つかわしいかもしれない。 恭平(あの頃はよかったな…) ふと、そんなことを考えてしまう。小学生時代の俺は、この並木通りで友達とよく遊んでいたものだ。茂みを使ってかくれんぼをしたり、エアガンを手に少し本格的な撃ち合いゲームをしたり、木登り競争をして枝を折り、通りかかった年寄りに怒られたり…。
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