第1章

2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
昔の俺はどうしようもないボンクラだった。 『朴訥で誠実』なブサメン たまにはそんなのを求める女子もいようが、そんな声を待ってたら一生彼女なんかできなかっただろう。 二年前、ボンクラな俺は少しでも名のある学校で大学デビューを果たすべく、なんとか1.5流私大に合格した。 ところが、通い始めたのは華やかなキャンパスとは程遠い、東京郊外の理工専用キャンパス。遊んでるのは、下からエスカレーターで来た別キャンパスの国際学部や経営学部の連中ばかり。数学が得意だからと入学した理学部数学科には、予備校生以下のブサメンばかりが凌ぎを削っていた。 尤も、俺はその凌ぎを筆頭で削っていたので、当初はブサ軍団に身を任せていた。ここでは、同じように大学デビューを夢見ていたコージ、ジュンと言う仲間ができた。何故か下の名で呼ぶと青春感が滲み出るのだが、二人とも入学式のスーツ姿はナイツの塙にサンドイッチマンの伊達みたいなジャガイモ野郎だ。 ただお互いピンと来たのは、馬鈴薯系の中にあって、俺らだけが美容室で髪を切っていたことだ。大学デビューも期待していない奴らは、いわゆる千円カットに通い、ありえない刈上げを露呈していたが、この三人だけはより韓流的な襟足を保っていた。それがそこはかとなく気持ち悪いことにもお互い気づいていた。 とにかく、俺ら三人はお互いの気持ち悪さを尊重しつつ、同じ授業を選択し、同じ学食を摂り、同じ雑誌で見た店に足を運んでいた。 入学後、理学部生も常に迫害されているわけではなく、1、2年次の単位は文系の素敵な奴らとともに一般教科を受講することができた。チャンスは平等なのである。 ここで、俺は一つ目の幸運に巡り会う。そこでの選択が俺のその後の人生を変えることになるのだが、当時のボンクラな俺にはそんな考えはまだ到底及びようもなかった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!