第1章

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はぁ、はぁと真っ黒なメイド服を着た幼女が、荒い吐息をもらしながら歩いていた。どこを見渡しても鏡、周囲を覆う鏡に自分の姿がうつりこんでいる。何時間、歩いたかわからない。鏡に手をつき、歩みを止めた瞬間にその声は響く。 『貴女なんて誰にも必要とされてない』 鏡の中の幼女がニヤニヤと笑いながら言う。 『貴女なんて、誰からも愛されることなく、好かれ留こともない。なぜなら──』 幼女は力任せに鏡を叩き割るが、鏡の中の幼女は割れても消えてなくならない。ポタポタと血が滴り落ちて、幼女の手を傷つけるだけ、 『なぜなら貴女は人殺しだから、怖い、こわーい。人食いの鬼だから、貴女は人を食う、殺すことしかできない。何かを守ろうだなんて、できるわけがない。無理っ!! 無理っ!! 無理っ!!』 鏡の中の幼女がニヤニヤと笑いながら、語りかけてくる。 『誰だってそう思ってる。弱くなろうが、小さくなろうが、幼くなろうが、貴女のやってきたことはなくならない。貴女は鬼で、人殺しで、罪深い罪人なのだから、貴女みたいな鬼はいなくなればいいと思ってる。貴女なんて死ねばいいと思ってる』 「違う、わたくしは」 『否定しても無駄。本当は自分がよくわかってるんでしょう? 「ここにいていいのか?」「自分みたいな鬼が、こんな平穏な生活を送っていいのか?」っねぇー、答えはNO!! ありえない!! アンタみたいな鬼は地獄に堕ちるべき!! 死ね!! 死ね!! 死ね!! 今すぐに死ね!!』 キャハハハハ!!!! と鏡の迷宮ので高笑いが響き渡り、人食い幼女こと、陰火( インカ)は意識を失った。 陰火が鏡の迷宮に迷い込む数日前、山都大聖(ヤマト、タイセイ)は、骨董店の倉庫整理をしていた。 山都の仕事は何でも屋。簡単に言えば、格安でなんでも請け負う仕事である。それは幅広く、庭の草むしりから、家の掃除、夫婦喧嘩の仲裁、おじいちゃんの肩叩き、祖母の嫁への愚痴を聞きつつ、お嫁さんの怒りを受け止め、浮気性の夫を川に叩き落として反省させる。 レンタルビデオの返却、ちょっとエッチな本を変わりに買ってくる。怪しい小箱を西から東へ。嫌みな上司の弱味を握り、ダメな部下の素行調査などなど、それを数人のチームに別れてやるあたり、依頼は少なくない。 簡単に言うと『知人や友人には頼みにくい仕事や依頼』を請け負うと考えればわわかりやすいだろう。料金さえ払えば秘密厳守
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