第1章

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瑠衣が夜泣きを繰り返し、三時間起きに授乳をする毎日。 初めは、楽しんで出来ていた育児も、 24時間体勢で、瑠偉の面倒を見ていると、義務感だけで精神を保つしかなかった。 瑠偉お願い、そんなに泣かないで。 あやして寝かしておっぱいあげて…… その繰り返し。 スヤスヤ寝ている時は天使のようなのに、 泣きじゃくる瑠衣は小悪魔のように私の精神を追い詰める。 そんな毎日が過ぎていき 季節は夏の残暑を残した9月終わり頃。 瑠偉を託児所に預け、ヨシのサロンの手伝いを始めていた。 「ミユキさんて子供を産んだとは思えないほどスレンダーですよね! 何かエクササイズされてるんですか?」 ヨシのサロンにスタイリストとして入店してきた綾野さん。 ヨシの後輩で、ブランクがありながらも、ここで技術を見直しながらヨシのサロンの原動力になっている。 ハキハキしていていつも元気がいい。 「エクササイズする時間なんて全然ないよ。育児疲れで痩せちゃったみたい」 事実、授乳している期間、栄養を瑠衣に注入しているからか、 体重がみるみる落ちていって、激痩せしてしまった。 瑠偉の面倒を見る事でいっぱいいっぱいだったから 食事もちゃんと取れていなかったのかもしれない。 ヨシはサロンがオープンした事で忙しくなり、 私が作りおきしておいたものを ヨシは遅く帰ってきて一人で食事していた。 相変わらず、私とヨシは同居人として距離を保っている。 それでも休みの日は瑠衣をお風呂に入れたりしてヨシも瑠衣がいる環境を楽しんでいた。 家族とは言えない関係だけど、 こんな同居生活も悪くはないかも。 「それにしても、先輩と本橋さんて不思議な関係ですよね。一緒に暮らしていて夫婦じゃないなんて」 綾野さんは私たちの事情を知らない。 「瑠衣はヨシの子供ではないし、私にはまだ離婚していない夫がいるの。 私とヨシはただの同居人」 「えっ。そうなんですか?てっきりお子さんの父親は先輩だと思っていましたよ。」 綾野さんは心底驚いたように、目を見開いた。 そう思われて当然なんだけどね。 ヨシったら「パパでちゅよー」って皆の前で抱っこするから呆れちゃう。
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