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きっとアシスタントの吉田くんも私たちの事を誤解しているはず。
「でも、先輩は本橋さんの事、好きですよね。あんなに瑠衣くんの事を可愛がってるんですもん」
「…………」
「私、先輩の事、学生時代すごく好きだったんです。だから、雇ってもらえてラッキーだなって。久しぶりに偶然、学校で先輩に会えた時は運命感じちゃいましたよ」
綾野さんは遠くを見るように目を細めてその時の様子を思い出したかのようにホンノリ頬を紅く染めた。
その様子は恋する乙女そのもの。
ヨシは普通に格好良くてイケメンだから
誰かに好かれて当然だ。
「そしたら、本橋さんと同棲してるって知って少しショックで。
でもまさか、ただの同居人だと思わなかったです」
「まさかの同居人だから、ヨシはフリーだよ。私に遠慮しないでね」
「そんな風に言われたら、私ほんとに先輩にモーションかけちゃいますよ!」
綾野さんは目をキラキラさせて、身を乗り出した。
「ずっと本橋さんの事が気がかりで。二人は想い合ってるのかと思ってましたから」
「ううん、違う違う。私たち、まだそんなんじゃないの」
「まだ?」
綾野さんは私の言葉の真意を知りたいとばかりに大きな瞳を見開いたまま、私に問い質す。
ヨシは私と再婚して瑠衣の父親になりたいと言ってくれている。
だけど、私がまだそんな風にうまく切り替えが出来ないでいるっていう事なんだけど……。
それを、ヨシの事を好きだと言っている綾野さんに言うべきじゃないと思った。
私が返答に困っていると、
サロンのエントランスの扉が開いた。
お客さまだった。
「「いらっしゃいませ!」」
反射的に綾野さんと私はお客さまに向かって笑顔で挨拶をした。
よ、良かった。
タイミングよくお客さまが来て……。
今のヨシとの関係は微妙過ぎて説明できない。
ヨシを縛っていてもいけないと思うし。
ヨシだって私みたいな子持ちより、普通の女の子の方が障害がなくていいはずだ。
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