不思議な声

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青年の短い黒髪と、シワのついたカッターシャツがフワリと舞い上がる。 「えっ、なっ!……花の香り?」 青年は突然のことに目を見開き、キョロキョロと周りを見回すが、薄桃色の空気から甘い花の香りを感じ、動きを止める。 それと同時に、頭の隅から何かがスルッと自然に抜け落ちた。 「……あれ?」 急に、自分が今ままで何をしていたのか、どこにいたのか、わからなくなる。 空に輝いていた星は、役目は終えたと言わんばかりに先程までの美しさを隠していた。 視界には薄桃色のもやが掛かっていて、何も捉えることができない。 何だ、これ。
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