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「なぁ、ギーラン。あんた、もしかしてこの銀糸の篭手の元々の持ち主なんじゃないか?」
オレはふと思って尋ねた。
「ふふふ。さあな、そんなこと忘れてしまったよ」
最後に「あまり根をつめ過ぎないようにな」と言い残し、ギーランは去っていった。
残されたオレは、指先の感覚を意識しながらもう一度銀糸を飛ばす。
さすがに思い通りとはいかなかったものの、わずかに曲げることはできた。銀糸が指先の延長だという感覚が、なんとなく掴めたような気がした。
もう一度銀糸を放とうと指先に集中した時、脳裏を過ぎったのはシュナイゼルのことだった。
オレはこの場所でやっていけるのか?
この場所に馴染むことができるのか?
というかそもそもこの場所に腰を落ち着けるのか?
そんな疑問が次々と沸き上がってくる。
くそっ、今は銀糸の扱いに集中しなくちゃいけないってのに……
「まったく、他人と一緒にやってくってのは考えなくちゃなんねぇことが多すぎて困るぜ!」
放った銀糸が月明りを反射してキラキラ輝く。
その軌跡は、綺麗な放物線を描いていた。
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