第2話 太田美桜

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「おい美桜、オマエ何だよ。黒人より真っ黒だな」 自分で開業している探偵事務所の中に、高野仁が笑いながら姪っ子の太田美桜を招き入れる。 「うるさいなぁ、しょうがないでしょ。毎日毎日炎天下で練習してるんだから」 美桜は叔父に向かってタメ口で話した。 「練習練習って、ソフトボールなんてさぁ、金にならないことでムダに体力を使わないで、俺のとこで夏休み中ずっとバイトしてろって言ったろ。普段仕事がない探偵事務所が、最初で最後かもしれない書き入れ時を迎えてるんだから」 「そんなこと言われても、うちの学校は原則バイト禁止なの。で、今日は何をさせてくれるの?」 「ああ、猫探しだよ」 「猫?」 美桜は面倒くさそうに顔を歪める。 猫探しは過去にも経験があって、こんな暑い日にやる仕事ではないことは重々承知しているのだ。 「ああ、これが一番儲かるんだよね」 仁は親指を立てて笑顔を作った。
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