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私達は、止めていた足を再び動かし始めた。
あんなに寒かったのに……今は何故か少しも寒いと感じなかった。
男の人と携帯の番号を交換するだけで一喜一憂して、ドキドキして……。
こんな気持ち、もう一生経験することなんてないと思っていたのに──。
忍くんと別れ、玄関に入った瞬間、スマホのバイブの音がバッグの中から聞こえてきた。
靴を脱ぎかけていた私は、あたふたとスマホを取り出す。
メールの着信ランプが青く明滅していて、開いてみると忍くんからだった。
内容は、たった一言。
《 おやすみ 》
───これだけだった。
絵文字も何もない、一見したらひどく素っ気ないメールだったけど。
それがホントに忍くんらしくて、でも全然冷たいとかは思わなくて。
むしろほっこりと気持ちが温かくなって、私は玄関先で一人、クスクスと笑ってしまったのだった。
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