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「……………!」
ドキッ…と、大きく胸が弾んだ。
鼓動が少し、速くなる。
ギャップって───ズルい。
普段は無表情だから、たまにこんな優しい声で優しい笑顔を見せられると。
不覚にも、ドキドキしてしまう……。
「あ、わかった」
沸き上がってくる不思議な感情に一人戸惑う私の前で、忍くんは携帯を見て、声をあげた。
液晶画面をこちらに向けてくる。
「これ、俺のアドレスと番号」
数字とアルファベットの羅列が目に飛び込んできて、私は慌ててスマホを持ち上げた。
アドレスを登録する指が何故か震えていて、私は唇を噛み締めながら指に力を込めた。
「……メール送ったけど……届いた?」
登録したあと、空メールを忍くんのアドレスに送信する。
10秒ほど経ったところで、忍くんの手の中の携帯がブーッと振動し始めた。
「あ、来た」
忍くんは何故か、少しの間じっと携帯の画面に見入っていた。
何も文章を送っていないのにどうしたんだろう、と思っていると。
しばらくして忍くんはパチンと携帯を閉じ、こちらを向いて小さく微笑んだ。
「後で、登録しとく」
そう言うと、彼はポケットに携帯を戻した。
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