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「…………ねぇ」
口を開くと魔法が解けてしまいそうな気がして、忍くんに寄り添いながらずっと黙り込んでいたのだけど。
さすがに寒くなってきて、私は服で前を隠しながらゆっくりと身を起こした。
「…………ん」
気だるげな返事が聞こえ、忍くんは軽く目元を擦る。
どうやら少し、ウトウトしていたらしい。
「風邪引いちゃうから……寝るならちゃんとベッド行かなきゃ」
「………んー」
目を擦りながら、忍くんはのろのろと起き上がった。
「……………」
そうしてお互いの姿を目にして、私達はふっと苦笑を漏らした。
「なんか……スゴいことになってんね」
「……うん。……後で掃除、大変だね」
「服も結局汚れまくったし……」
「ホントに帰れなくなっちゃった……」
溜め息混じりに呟くと、忍くんは小さく笑いながらそっと私の体を胸に引き寄せた。
「服洗ってる間、一緒に風呂入ろっか」
その言葉に、私はドキリとする。
ほんの一瞬恥ずかしさが勝り、躊躇を覚えたけど。
「…………うん」
何だか全てが今更だと感じてしまい、私は忍くんの背中に腕を回しながら小さく頷いた。
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