undici

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バッグを逆さまにして、勢いよくそれを縦に振る。 入れっぱなしだったハンカチやティッシュに紛れて、くしゃくしゃになった紙切れが最後にポトリと絨毯の上に落ちてきた。 「…………あった!」 整理整頓が出来ない自分が大嫌いだったけど、この時だけはズボラな自分の性格に感謝する。 あの時、忍くんから奪い取った紙を、私はバッグに入れたままずっと忘れていたのだ。 逸る気持ちで、紙を開く。 中にはご丁寧に、携帯番号からメルアド、ラインのID、さらにはツイッターのアカウントらしきものまでが記入されていた。 ウザい、と思う気持ちを何とか抑え込み、私は再びスマホを手にして書かれている番号に電話をかけた。 『…………もしもし?』 知らない番号だからだろうか。 妙に警戒したような、本田さんの声が返ってきた。 「もしもし、本田さんですか?」 『………そうですけど』 「遅くにすみません。……真白です」 『えっ? 真白ちゃん?』 本田さんは、心底ギョッとしたような声を出した。  
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