温もり

佐久間は私に動揺がバレないようにハンバーグを口に詰め込む。
私もフォークで刺していたハンバーグを口に入れたけど、美味しいと聞いていたわりには少し味気ない。

「うん、でも加奈子は取引先の相手で、この食事は言わば接待だろ？」

佐久間さん、目が泳いでるんじゃ説得力がないですよ。
言葉を探しながら口を開いている佐久間はやっぱり動揺している。
面白半分でもう少し揺さぶってみることにした。

「確かに、優等生の百点満点の答えですね。でもそのあとにそれ以上の関係が付きます。彼女に罪悪感とかないんですか？」

上目遣いでまたチラッと佐久間を覗き見ると固まっていた。
そして眉間にシワを寄せている。

ウザいとか思ってんのかなぁ、まぁ佐久間だからいいんだけど。

「あるよ、でも美遥といるの最近息が詰まって。仕事を辞めさせたのは失敗だった」

私の目を捕えて佐久間は笑う。
男としての余裕を見せたいのかもしれない。

私から視線を外し、目を細めて何を思い出しているのか、うっすらと笑みを浮かべている。
私は置いてけぼりで、きっと佐久間は彼女の“美遥”を思い出しているのだろう。