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今まで盛大に笑っていたのに、ふっと優しい表情になって、僕の肩に顎を乗せてくる。 「もう俺の可愛い純央じゃないのね。」 耳元で静かに、すん、と鼻を鳴らして言うから、そのままにさせてやる。 「僕が義人のモノだったことは、一度もないけどな。」 そのまま腕が回されぽんぽんと柔らかく肩をたたかれた。「よかった。」と囁くような声が聞こえたから、それには何も答えないですぐ手の届く義人の髪にくしゃりと軽く乱すように触れる。 義人はすぐに身体を離すと、僕の顔を覗き込むようにして言った。 「で?もうヤったの?」 逞しい義人の肩をばっしーんと遠慮なく叩いた。いつもと同じ調子で笑っている顔につられて、僕も呆れながら口元に笑みが浮かぶのを止められない。 今日はこの後、ふたりの写真を入れるフォトフレームを買いに行こうと思う。
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