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「お邪魔します」
ドアをソッと開けながら声を潜める。
当たり前だが家主の居ない部屋は真っ暗で静まり返っていた。
慣れない部屋に電気のスイッチを求め、壁に手を這わせ灯りを点けることができた。
時刻は23時を少し回ったくらい。
衛くんは何時ごろ帰って来るんだろうか。
帰り際、眠かったら寝てていいと言ってくれたけど、さすがにそういうわけにはいかない。
とりあえずソファーに腰を下ろし、近くにあった雑誌に目を通し時間を潰すことにした。
―――ポーン……
ピンポーン……
その音に私の遠退いていた意識がハッキリとする。
幾度となく襲ってきた睡魔に打ち勝っていたつもりだったのに、いつの間にか負けてしまったのだと目が覚めて分かった。
「美月。美月」
やや声を潜めて名前を呼ぶ衛くんに鍵を持っていないんだと気づき、私は慌てて鍵を開けた。
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