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部活おわり。
誰もいない校舎の裏で彼とキスした。
「日が暮れるのが遅くなったね」
もう七時を回っているというのに、あたりはまだ十分明るい。
「もう梅雨が明けたら、夏だもんな」
笑う彼の口元から白い歯が覗いた。
夏が来れば、もうこんな風に話していられなくなる。
「部活ももうすぐ、引退だね」
「受験だもんなー」
苦笑いの彼につられて笑った。
彼が、夢のために遠くの大学を狙っていることは知っている。
部活を引退すれば、勉強一本に集中するつもりだってことも。
「……夏なんて永遠にこなくていい」
「どうした?」
「ずっと、このままだったらいいのに」
「……ごめんな」
泣き出してしまった私のあたまを彼の手が撫でる。
この優しい手が傍にいてくれる間だけでも笑顔でいたくて、涙を拭いて無理に笑った。
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