01.白い首、大きな手

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 仰向けに転がる彼女に馬乗りになってぼくは彼女の白くて細い喉に手をかけた。これから初めてひとを殺す訳だけれどもぼくの心には罪悪感だとかそういう都合のいい感情はこれっぽっちもない。  彼女はそれこそ黒真珠のようなうつくしい瞳でぼくをみる。少しだけぼくもみつめてふと彼女のくちびるに視線をずらした。口紅をぬったように紅い唇だけれど化粧とかいった類のものは特にしていないらしい。さっき指先で唇をなぞってみたけどなにもなかった。  それにしても彼女はきれいだ。白い肌、流れるような黒髪、牡丹のように紅い唇、桜のような桃色の頬。どれも黒いセーラー服によく映える。今でも充分にうつくしいのにおとなになったらどんな美女になるのだろう。将来が楽しみだけれども彼女に将来はない。ぼくが彼女を殺すから。  ところでぼくが彼女の殺害に至った経緯だけれども。彼女はぼくに恋情を抱いているらしい。 こんなにきれいな彼女が、よりにもよってぼく。男としては嬉しい限りでしょう。そうだと知ると今まで高嶺の花だとおもっていた彼女が急に安易に手の届く安物だとおもえるから不思議だ。彼女はぼくがすきなのだから、ぼくが彼女にたいして何をしたって彼女がぼくを責めるようなことはけっしてないのだ。ぼくが彼女の肢体のどこをどういう風にいじくりまわしたって彼女は百合のような笑顔で笑って赦すだろう。或いは悦ぶ、か。
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