to_be -あの星へ-

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あの星が、夜をそっと照らしてくれた。 その幽かな光が私を導いてくれた。 闇夜に寄り添ってくれるその光が私は好きだった。ずっとそれだけを見つめていた。 いつしか私はそれに憧れるようになっていた。 「私もあんな風になりたい。暗がりに惑う誰かに光を見せてあげられる人になりたい。同じ悲しみを抱いている誰かの光になりたい。」 手を伸ばす。しかし、その手は空を掻(か)くばかりで星には届かない。 背伸びをする。しかし、距離はちっとも縮まらない。 頑張れば頑張っただけ思い知らされる現実。ーー 「どうやったって近づけやしない」 ついに私は座り込んで、ぐずぐずと泣き出した。 「私に羽根があったらな……」 そんな時、誰かが教えてくれた。 「飛べない君は歩いていこう。君が立つ地面は、ほら、360度全て道なんだ」 濃藍(こいあい)の地平が緋色(あけいろ)に燃え出した。 辺りは依然(いぜん)として暗い。闇を湛(たた)えた世界は一寸先さえ判然(はんぜん)としない。 「こんなところを進めだなんて、正直怖いよ。……でもーー」 一歩、私は前に踏み出す。 「どうしても、あの星に近づきたいから、歩くよ」 その決断が正しいのかは分からない。今でも迷っているし、何度も疲れて立ち止まっている。今あるものも捨てられないでいる。それでも、諦めたくないんだ。 そんな決意が揺るがないように、自分に言い聞かせる。 「飛べ。未来へ。あの星へ」 あの星が、夜をそっと照らしてくれた。 その幽かな光が私を導いてくれた。 【結】
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