【序章】ふたりぼっち

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部屋に戻ると、兄さまは「良かった!」おれを抱き上げてぐるぐるその場で回してきた。 目が回る! おれの訴えを聞き流して、兄さまはおれを抱き締めてきた。 そりゃもう、ぎゅうぎゅうに抱き締めてきてくれる。 嬉しいけど苦しい。本気で苦しい! 兄さま、せめて手の力弱くしてくれないかなぁ!     「終わるんだ。那智、ようやく終わるんだぞ。この地獄の日々。これからは俺とずーっと一緒だ。二人で暮らせるんだ」 「にいざまっ、ぐるじいでず!」    「あ、悪い悪い。あんなに上手くいくとは思わなかったからな。ヤッてやったぜ的気分だ。やればどうにかなるもんだな。那智、今日は赤飯だな」 おれを解放してくれる兄さまだけど、 「赤飯?」 おれは食べたこと無いからわかんないです、と言った。 赤飯って……赤い飯? のこと? かな? おれの疑問に兄さまも、 「俺も食ったことはねぇや」 よく小説の台詞に出てくるから言ってはみたけど、っと頬を掻く。 うん、兄弟揃って赤飯ってのがよく分かってないや。   「でも、ま、これからはそれまで食えなかった物も食えるんだし、そのうち赤飯ってのも食ってみような。那智、一緒に食いに行こう」 クシャクシャに頭を撫でてくれる兄さまを見上げて、おれは腰に抱きついた。   こうやって甘えさせてくれる兄さま、おれは大好きだ。 学校じゃ、孤立してることが多いし、おれを大好きや必要だって言ってくれるの兄さまくらいだし。 おれ、兄さまのためなら何でもできる。 兄さまを喜ばすためなら、何だってしてあげたいくらいだ。   「兄さま、大好きです」 言葉にすると、兄さまは凄く喜んでくれる。 「俺も」 そう言って再度おれを抱き締めてくれる兄さまは、畳んだ敷布団の上に腰掛けて俺を腕の中に閉じ込めた。
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