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「麻弥ちゃん、正臣と咲菜が迎えに来たわよ」
杏奈さんの声に誘導され振り返ると、扉の前には咲菜ちゃんと、グレーのタキシードを着た先生が立っていた。
「まーや!綺麗!まーやもシンデレラみたい!」
キャッキャッと声を上げて、ブーケを持った咲菜ちゃんが駆け寄って来る。
「これね、咲菜と杏奈で作ったの。白いお花は、トルコキキョウって言うんだって」
満面の笑みを添えて私に渡してくれたのは、白のトルコキキョウとピンクのバラをメインに使った、ウェディングブーケ。
「うわぁ~綺麗だね!咲菜ちゃんありがとう。…いい香りがする」
喜びを広げた顔に近づけると、ふわっと優しい香りがした。
「――麻弥。眩しいくらいに、とても綺麗だ」
彼が私を見つめて目尻を下げる。
眩しいのは彼の方だ。
ただでさえイケメンなのに、初めて見る彼のタキシード姿は眩しすぎて眩暈がしそう。
「先生……、ありがとう。こんな素敵なプレゼント…私、まだ実感なくて…」
私の正面に立った彼を見上げる私は、感極まって言葉を詰まらせた。再び滲む温かい涙で、彼の笑顔が霞んで行く。
「行こう、麻弥。みんなが待ってる」
彼は指で優しく私の涙を掬い、大きな手のひらを差し伸べた。
―――本当に今日、私があなたの妻に?
これは、夢じゃない。
きっとこの手を掴むために、私はこの世に生まれて来たんだ。
愛してる。先生―――
「はい――」
私は澄んだ涙と笑顔を浮かべ、彼の手に指を重ねた。
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