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シンタロウは、もろにくらって芝生に転がった。
ララが上から覆いかぶさり、パンチの連打を浴びせた。
彼女の攻撃には、シンタロウもなす術がない。
「ララ、もういい。帰るぞ!」
あいつは、頬の傷を気にしながら足早に車へ戻った。
あいつの悔しそうに奥歯を噛む表情が、オレの心に刻み込まれた。
いい気味だ。
あいつを追って車へたどりついたララは、助手席に乗る間際、オレたちに向かってあっかんべーをした。
大きな目の下瞼を引っ張って、耳まで裂けた口から、長い舌を伸ばす。
オレは、こんなに愛らしくて恐ろしいあっかんベーを見たことがない。
ドアを閉める彼女に「マスクをしなさい」と苛立つあいつの声。
走り去る車を見ながら、数年後のララを想像する。
もっと食べてもっと大きくなったララは、どんなに美しくておぞましいラバナスに成長するのだろうと。
こうして稲葉兄弟、四年ぶりの再会劇は終わった。
これがあいつとオレの第二ラウンド。
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