友藤は、無口な奴だった。

7/8
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 友藤は、無口なヤツだった。  巷では「イケメン」と言われるヤツで、女の子達にも人気があったけれど、恋愛とかにはあまり興味がなさそうだった。  今日のコンパに参加していたのも、俺にとっては意外なことだった。  でも、皆と一緒にいる時でも無口なヤツなので、今日のコンパもほとんど酒を飲んでいるだけで、女の子達が話しかけても、ほとんど生返事ばかりだった。  そのくせ、俺が傍にいる時はよく話しかけてくるのだ。 そうして、囁きかけてくる。耳元に。  ガタンッと電車が揺れた。  俺の体も、友藤の方に倒れる。 「大丈夫か?」  友藤は俺を抱き止めて、耳元に囁いた。  その声は、俺の体を縛り付けるには十分だった。  囁かれる言葉に、体が毒されていく。  止めろと言いたいのに、言葉が出なかった。  辛うじて出たのは、震える吐息だけだった。  体が、熱い。  これは、熱があるんじゃない。  それは、俺が今まで感じたことがないものだった。   いや、違う。  友藤が俺の耳元で囁くたびに、背中で感じていたもの。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!