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友藤は、無口なヤツだった。
巷では「イケメン」と言われるヤツで、女の子達にも人気があったけれど、恋愛とかにはあまり興味がなさそうだった。
今日のコンパに参加していたのも、俺にとっては意外なことだった。
でも、皆と一緒にいる時でも無口なヤツなので、今日のコンパもほとんど酒を飲んでいるだけで、女の子達が話しかけても、ほとんど生返事ばかりだった。
そのくせ、俺が傍にいる時はよく話しかけてくるのだ。 そうして、囁きかけてくる。耳元に。
ガタンッと電車が揺れた。
俺の体も、友藤の方に倒れる。
「大丈夫か?」
友藤は俺を抱き止めて、耳元に囁いた。
その声は、俺の体を縛り付けるには十分だった。
囁かれる言葉に、体が毒されていく。
止めろと言いたいのに、言葉が出なかった。
辛うじて出たのは、震える吐息だけだった。
体が、熱い。
これは、熱があるんじゃない。
それは、俺が今まで感じたことがないものだった。
いや、違う。
友藤が俺の耳元で囁くたびに、背中で感じていたもの。
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