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愛羅の濡れた睫毛が、ゆっくりと上下する。
漆黒の睫毛が濡れる様を、何度も見てきた。
いつも身が切られるほどの心痛を覚えてきた。
今も瀬乃山の胸は叫び出したいくらいの痛みを覚えている。
けれど、いつもと違うのは、同時に熱く切なく、そして温かく満たされていることだ。
「君が今この瞬間しか信じてくれなくても構わない。俺はすべての瞬間で、君を愛している。……言っただろう? 俺は、それを君に伝え続けると」
ついに堪え切れなくなった水滴が、次々と愛羅の頬を流れ落ちる。
それを押し留めるように瀬乃山は愛羅をきつく抱き締め、そして唇を合わせた。
到底人間のものとは思えないほど熱い体温が伝わる。
その熱さが互いの輪郭を融かし、激情が交じり合う。
互いに同じ気持ちでいることを、もう疑うことはない。
それに、瀬乃山は気付いたのだ。
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