逃げる魚、追う釣り人

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どんな顔して、そんなセリフを言ってるんだか。 改めて見上げると、彼も何だか複雑な表情をしていて。 「なんて顔してるんですか……」 「いや」 眉根を寄せ、言いよどむのを、こちらも眉根を寄せて首を傾げる。 ほんの数日前、私にあんな態度を取られたにも拘らず、こんなとこまで追いかけてきて、一体何がしたいのだ。 「泣き顔を」 漸く彼が、本質を口にする。 けれど、聞かなければ良かった。 「ところどころ、覚えてるって言ったよな。泣き顔を見た気がして、気になってる」 気絶したようにベッドに倒れこんだ辺りからは、絶対覚えてなんていないだろうと、思ってたのに。
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