僕だけが知る彼女

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彼女はこの学校に通う誰もが知っています。 真っ白の肌に長い黒髪、大きな黒目がちの目に長いスラリとした手足その上勉強も優秀。誰からも羨まれる人でした。 ですが、彼女はそれだで有名人というわけではありません。 そんな彼女は僕にとって大切な人でした。 今日は四月に付き合い始めて丁度三カ月の記念日です。 「今日は帰りにどこか行きたいところとかあるかな?」 「………………」 「それなら家に送るよ」 「………………」 静かに頷く彼女、二人は手を繋ぎ帰り道を歩きます。 「今日はこんなことがあってさ」 「………………」 「いやー、そのときは驚いたよ」 「………………」 「明日って何か用事ある?」 「………………」 ここまで来ればわかると思いますが彼女は口を開きません。学校では誰もがその事に触れることはありません。僕だってどうして話さないのかは知りませんし知ろうとも思いません。  声を出すこと無い彼女と何の変哲も無い僕がどうして付き合っているのか不本意ながらこの学校の都市伝説扱いにされています。 ですが、理由があるからこそ付き合えるのです。 「のど渇いたでしょ、何か飲む?」 「………………」 「わかった、コーヒーでいいね」 「………………」 そう、僕は彼女が何を言いたいのか目を見てわかるのです。理由はわかりませんが僕は彼女が口に出さなくても何を言いたいのか伝わるのです。 僕は道端の自動販売機でコーヒーを二本買うと少しだけ立ち止まりました。 今日は付き合い始めて三カ月の記念日です。自分の口からその事を言うべきなのか戸惑っていました。ですが、カバンにはプレゼントを用意しています。 覚悟を決めてコーヒーを二缶持つと彼女の傍に駆け寄りました。 「あのさ、今日って」 彼女の小さな手が僕の口を塞ぎそして、彼女は僕に伝えます。 『言いたいことがあるんだけど先にいいかな?』 僕は頷いて肯定しました。 こうやって彼女が僕に口から伝えるときには大切なことを伝えるときだけです。 「あのね、」 心臓がバクバク音を鳴らします。記念日のことに違いない、僕は確信していました。 「……………」 「えっ?」 「今日もパンツはいてないの」 僕の心臓は予期せぬ不意打ちに爆裂しました。 彼女は優秀で美人で僕の大切な人で何よりも変態でした。
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