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――瞬間、
保の持つ日本刀の刃がひらめいた。
一瞬のことで、その軌道を目で追うことなど、誰にも出来ない。
保の刃は、高広の持つライナーの研究レポートを真っ二つに切り裂いていた。
――パサリ――
音がして、レポートの半分が地に落ちる。
そこここで餌を待っている火種が飛び込んできて、あっという間にレポートを炎で包んだ。
「!」
消そうとしても手遅れだった。
ライナーの研究レポートは白い灰と焦げた紙切れに化し、風にあおられて舞う。
「もういいんだ、高広」
呆然と、唯一残されるはずだった、ライナーの遺産の残骸を見下ろす高広に、保は静かに言った。
「もういいんだ」
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