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「はあ!」
「別に誰かに殺されるわけじゃない。自分で死ぬわけでもない。文句あんのか」
そう言う側から、ガラガラと瓦礫が落ちてくる。
どこかで火の手があがったらしく、きな臭い臭いが漂ってくる。
「ばっ、ばかなこと言ってねーで、さっさと逃げろ。粉々になんだろ」
あちこちから聞こえてくる爆発の音で、その火薬の量は容易に想像できた。
暗殺専門などとうそぶきながら、実は派手好きの龍一が好みそうな量だ。
「早く逃げろ!」
高広は叫ぶが、保は涼しい顔をしている。
平常の調子で、
「あ、望美さんが監禁されてたらしい場所は見つけたよ。今は誰も捕まっていなかった」
などと呑気なことを言う。
「誰もいなかったんなら、もういいだろ。早く逃げんだよ」
高広が焦った調子で言うのに、保は落ち着いたままだ。
まるで突発的に雨に降られてしまったという程度の風情。
「そう。もういいんだよ、高広」
保の立つすぐ脇に瓦礫が落ちてくる。
雨粒じゃなくて、瓦礫の礫(つぶて)だ。
あんなもの頭に食らったら、ひとたまりもない。
足元でコンクリートが砕けて、破片が飛んだ。
どこかで電気系統がショートしたのか、火花がバチバチと音をたてる。
それでも動かない保に高広は怒鳴った。
「いいから逃げろってんだ」
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