口説き上手な凄腕バーテンダー

2/20
395人が本棚に入れています
本棚に追加
/456ページ
 今日のおすすめランチメニューの立て看板を店内に下げると、私はひと安心し、ドアにかかる『OPEN』の札を『CLOSED』へとひっくり返し、店内へ入ると客席にへたり込んでしまった。  26才。無理をすれば疲れも溜まるし、昨夜は夜遅くまで仕事だった。  おまけにランチはお得メニューなので近所に住む奥様がひっきりなしに来るのだ。 「どうして住宅街なのに忙しいんだろう」  思わず言ってしまう。  ディナーまでの2時間弱程度で片づけと準備をしないといけない。  休む時間もあるのだけれど、それは大幅にずれたお昼休憩の30分程度だけだ。  ここ、レストランアポロはとても人気ではあるが店員からブラック企業と呼ばれるほど、あまり良い環境で働いている状況ではなかった。  もれなく、私、紺野みゆも休憩時間30分のうちに昼食仮眠をとらなければいけなかった。  寝たい。  眠りたい。    その欲望と戦いながら、私はうつらうつらとしながら、そのまま昼も抜きで寝てしまいたい衝動に駆られる。
/456ページ

最初のコメントを投稿しよう!