理を屈する

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ぽつりと溶けだした闇に涙が流れている。それが自然にも私の心が惨めにも優しくなりたいと願ったからなのです。 なにも背負わなければ驢馬は長生きできたのかもしれないが、人は驢馬でなく人は人の気持ちすらわからなくて自分の心すらも、知ることができぬ生き物なのです。 闇が深く心に染み付いた人の多くはほんの小さな天使の手を払い除けてきた。今もそうやって生きているからこそ 死への希望と恐怖は私のそれと善人のそれと天地ほどの差がひらくが、そもそもそれは極小さなことだと説かれても 私ごときの徳で願うことも伝えることもできぬではありませんか? 夢に怯え希望に怯え今に怯え未来に怯え過去に怯え それだけで良いのです。
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