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グレーのカットソーと一緒に、袖を適当に捲られたネイビーのジャケット。
頭の上にはサングラスを乗せて、ボストンバッグを肩に担ぐようにして歩いてくるその姿を、たくさんの人の中から私は見つけた。
『お帰りなさい。』
『ただいま、彩星。』
どちらからともなく、抱き合う。
周りの人から、どんな視線を浴びていても。
『待ってたよ、夏輝。』
部長のことを、名前で呼ぶことにはまだ慣れてないけど、今なら言えるかもしれないって思ったから。
『……なんで赤くなってんの?』
そんな私のことを、笑いながら抱きしめる部長の温もりが、愛しくて堪らない。
この4年間が一気に頭の中を駆け巡って、部長がいる現在(いま)が動き出した。
空港から真っ直ぐ部長の家に帰ると、今までの会えなかった時間を埋めるように、何をしていてもお互いを求めあう。
手を繋いでいても、キスをしても、抱き合っても、それでもまだ足りなくて。
この空間にこうして一緒にいられることが、こんなにも幸せに感じられるなんて、予想以上の感動が私の心を埋め尽くしていく。
『彩星、もっと。』
『…もっと?』
『……分かってて聞いてるだろ?』
ソファーに並んで座る私をそっと押し倒すと、部長が私のおでこにキスをした。
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