112人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
『以上が、本日までの経緯です。』
遠藤部長の隣で、ワイン色のフレームを掛けた部長は、眉間に皺を寄せている。
『高梨さん、ありがとう。確か、カラーのチョイスは気に入ってくれてたと思うんだけど。』
『そうですね、悪い反応ではありませんでした。でも、決して納得していただけている感じではなかったと思いますので、それについては割愛しました。』
先週、客先に出向いたところまでの説明を一通りした。
『高梨さん、いいね。仕事の仕方が三浦部長に似てるよ。』
『僕が育て上げましたから。』
遠藤部長と話す部長が、私に向かってウインクをした。
だから、バレちゃいますって。
今朝、一緒に家を出る時に、再三注意された。
『彩星は、本当に顔に出るから、気を付けてね。何があっても、俺とのことを怪しまれないようにするんだよ。』
そう言ったの、部長なのに。
『三浦部長だったら、この件はどう持っていく?』
『そうですね……思い切ったことしたいですね。』
『例えばどんな?』
『今までの客先のイメージを無視して、全く新しいものを提案するとか…。あくまでも上品さとか高級感は外せないと思いますけど。
この資料に無いもので、消費者が実は求めていた感じですかね。』
さすが、部長。
私の説明と資料だけで、すでにイメージが湧いてきてる感じが伺える。
『でも、高梨さんなら、きっといいもの出してきてくれますよ。彼女のアイディアは、他の人よりもこだわりが強いですから、面白くなると思います。』
最初のコメントを投稿しよう!