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温かいシャワーの水滴が、少し冷えた身体の表面を転がり落ちていく。
元々のパープルの色が、一層濃くなった。
触れ合う肌と肌。
バスタブには、ミラノで買ったアロマキャンドルがゆらゆらとしている。
後ろからやんわりと抱きしめられながら、部長が気持ち良さそうに息をつく度に、私の首筋に当たって擽ったい。
ずっと望んでいたこと。
こうして、一緒に穏やかな時間を過ごすこと。
お互いが、お互いを想っていると目に見える形で感じられること。
私の肌に触れているのは、部長の手で。
その手に、自分の手を重ねる。
『パリでさ、彩星が酔ってただろ?』
『うん。』
突然、部長がパリに来てくれた時の話になって。
『やっぱりいい街だなって、思ってさ。彩星が帰りたくなくなったらどうしようかって、変な心配したりしてさ。』
『まさか。私は日本がいいし、部長といたいですよ。』
髪に落とされたキスが、返事の代わりだと分かった。
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