25

10/28
131人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
温かいシャワーの水滴が、少し冷えた身体の表面を転がり落ちていく。 元々のパープルの色が、一層濃くなった。 触れ合う肌と肌。 バスタブには、ミラノで買ったアロマキャンドルがゆらゆらとしている。 後ろからやんわりと抱きしめられながら、部長が気持ち良さそうに息をつく度に、私の首筋に当たって擽ったい。 ずっと望んでいたこと。 こうして、一緒に穏やかな時間を過ごすこと。 お互いが、お互いを想っていると目に見える形で感じられること。 私の肌に触れているのは、部長の手で。 その手に、自分の手を重ねる。 『パリでさ、彩星が酔ってただろ?』 『うん。』 突然、部長がパリに来てくれた時の話になって。 『やっぱりいい街だなって、思ってさ。彩星が帰りたくなくなったらどうしようかって、変な心配したりしてさ。』 『まさか。私は日本がいいし、部長といたいですよ。』 髪に落とされたキスが、返事の代わりだと分かった。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!