25

11/28
131人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
『ちょっと待ってて。』 部長が一旦ドアを開けて、出て行った。 まだ身につけたままのパープルのレース。 初めて一緒に入るから、このままでいい、と言われてそうしているけれど、こんな格好でお風呂に入ったことなんか勿論ないから、違和感しかない。 戻ってきた部長の手には、よく冷えたミネラルウォーターのペットボトル。 一口飲むと、火照った身体に染み渡っていく感覚が、疲れを少し癒してくれる。 仄かにイランイランの香りがする、アロマキャンドル。 『このキャンドル浮かべて、パリでもこうしたかったな。』 『部長が今度来た時にでも、そうしよう?』 『……あのさ。』 少し低くなった部長の声。 振り向いてもちゃんと部長の顔は見えないけれど、一段と抱きしめる腕に力が入ってきて。 『そういうの、いま言うのズルいだろ。』 『えっ、どうしてですか?』 『どうして……って。また確信犯?』 『えっ?』 パープルが、バスに浮かんで。 ふぅっと、身体が少し楽になったけど。 『……誘ってる?俺のこと。』 恥ずかしいだろうからと、着けたままにされていたそれが、部長に取られてしまった。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!