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『ちょっと待ってて。』
部長が一旦ドアを開けて、出て行った。
まだ身につけたままのパープルのレース。
初めて一緒に入るから、このままでいい、と言われてそうしているけれど、こんな格好でお風呂に入ったことなんか勿論ないから、違和感しかない。
戻ってきた部長の手には、よく冷えたミネラルウォーターのペットボトル。
一口飲むと、火照った身体に染み渡っていく感覚が、疲れを少し癒してくれる。
仄かにイランイランの香りがする、アロマキャンドル。
『このキャンドル浮かべて、パリでもこうしたかったな。』
『部長が今度来た時にでも、そうしよう?』
『……あのさ。』
少し低くなった部長の声。
振り向いてもちゃんと部長の顔は見えないけれど、一段と抱きしめる腕に力が入ってきて。
『そういうの、いま言うのズルいだろ。』
『えっ、どうしてですか?』
『どうして……って。また確信犯?』
『えっ?』
パープルが、バスに浮かんで。
ふぅっと、身体が少し楽になったけど。
『……誘ってる?俺のこと。』
恥ずかしいだろうからと、着けたままにされていたそれが、部長に取られてしまった。
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