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そんな中、救急車のサイレンが聞こえた。
「ほら、早速来たぞ」
医者は準備した。
ストレッチャーで運ばれてきた患者が処置室に入る。
「若いな。外で営業回りでもしているうちに日差しにやられたんだろう」
スーツ姿の男性は体格がよかった。
医者が患者の状態を観察し、看護師は熱や血圧などを測定した。
「顔が赤いな。恐らく熱中症だろう」
「先生、何かおかしいです」
熱を測り終えた看護師が言った。
「どうしたというんだね?」
「・・・何も異常はありません」
「そんなばかな」
医者はもう一度患者の顔を見た。
火照った顔、乾いた唇、苦しそうな表情。顔だけ見れば明らかに熱中症の患者
だった。
「熱も血圧も脈も正常です」
医者は聴診器を患者の心臓に当てた。
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