熱中症

3/7
92人が本棚に入れています
本棚に追加
/215ページ
そんな中、救急車のサイレンが聞こえた。 「ほら、早速来たぞ」 医者は準備した。 ストレッチャーで運ばれてきた患者が処置室に入る。 「若いな。外で営業回りでもしているうちに日差しにやられたんだろう」 スーツ姿の男性は体格がよかった。 医者が患者の状態を観察し、看護師は熱や血圧などを測定した。 「顔が赤いな。恐らく熱中症だろう」 「先生、何かおかしいです」 熱を測り終えた看護師が言った。 「どうしたというんだね?」 「・・・何も異常はありません」 「そんなばかな」 医者はもう一度患者の顔を見た。 火照った顔、乾いた唇、苦しそうな表情。顔だけ見れば明らかに熱中症の患者 だった。 「熱も血圧も脈も正常です」 医者は聴診器を患者の心臓に当てた。
/215ページ

最初のコメントを投稿しよう!