2200年代~

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 「ゴースト・パック」システムは、1960年代以降急速に栄えた「サイバーパンク」の思想を忠実に再現し、実用化したものである。  自我を形成する「記憶」群と「自己認識(自らが自らであって他人ではないという潜在的意識)」を中心にした情報を電子化して身体より抽出し、膨大な要領を誇るサーバーに保存する。本来は医療用に開発されたものであり、精神的・肉体的に重度の障害を負った患者(例えば植物状態で意思の疎通が不可能)とコミュニケーションをとるためのものとして、行政の厳重な監視のもとに運用されていたものであったが、医療の民営化、大企業化、そして再生医療技術の飛躍的進歩により脳を含む身体の大部分を「量産可能」なものにした時、倫理的な議論を成さずして、2200年代、この「ゴースト・パック」システムはなし崩し的に一般社会へと浸透していった。このことはつまり、劣化しない「自己」といつでも再生可能な人造「身体」の組み合わせによる、永遠の命の誕生を意味し、特に高所得高齢者からの強大な支持を受け、行政はしぶしぶ事後承認を出す以外に道はなかった。  2204年、「ゴースト・パック」システム利用者向けのインターネットサービス「ユートピア」が開設される。身体的制限を無くし、不自由から解放された人々は、自らの住居であるサーバーから広大なネットワークの世界へと自由に出入り出来るようになり、数世紀にわたり議論されては実現しなかった「地球グローバル化」を一挙に成し遂げたと称賛された。
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