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母を思うが故の娘の複雑な心情を読み取ったエリックは、そっとルーナの耳に囁く。
「お前は暫くここに居たらいい。…一巡りして国々を見回ったら、戻ってくるさ。」
「…!」
ルーナは唇を噛み締め葛藤していた。
再会を果たしたばかりの実の母と離れがたいのは事実だ。
この国で母の後を引き継ぎ王女として生きる道もある。
しかし。
ルーナには決して切り離せないたくさんの大切なものがあった。
愛を注ぎ育ててくれたダスティン老人や、自分を一人前の竜使いにしてくれた師であり、愛する人エリック。
温かく受け入れてくれたイオムの港町の人たちや、ジン・ジェヴァン、テレサ姫。…
隣に立ち見守っていたシェリーナが、項垂れ考え込んでいる娘にそっと囁いた。
「迷っているのね?…ルーナ」
「おかあさま。…あたし、・・・」
シェリーナはクスリと微笑み、そして言った。
「…どうして?だってあなたはネゴシエータだもの。まだまだ人々のためにしなければならないことがあるのでしょう?」
「!」
「行ってらっしゃいな。…愛する人と共に。わたくしなら大丈夫よ。信頼できる国民たちがいる。それにディマンだって。…わたくしたちはいつでも会える。そうでしょう?エリック」
凛とした声で言ったシェリーナは、最後にルーナの傍に立つ凛々しい青年を見上げ、そう投げた。
「もちろん。」
力強いエリックの返答に、ルーナは感激に目を潤ませ頷き微笑んだ。
「うん!…分かった。おかあさま。あたし、行くね!」
「それでこそわたくしの娘。…いつでも待っていますよ。」
「はい!」
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