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命婦は辺りを窺った。
此処のところずっと、何処に居ても、誰かの視線を感じていた。
斎王様の側に居るときも、食事をしているときも、語らっているときも、そして、着替えをしているときさえも。
一体、誰が。
私には夫も、子どもも。
孫さえも居るのにっ。
「どうかしたの?」
今日も麗しい斎王様に呼びかけられ、命婦はほっとした。
なにか落ち着く顔だ、と思う。
真鍋たちは、逆に落ち着きをなくすようだが。
「ねえ、暇だから、なにかやらない?」
「また、今日はなんでございますか」
このところ、それが斎王、成子(なりこ)の口癖だ。
この人、斎宮を退下するまで言い続けるのではなかろうかな、と思っていた。
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