第1章

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 東郷は、金で囲った愛人の家のダブルベッドに裸で横になっていた。たった今まで第一戦頑張った所だ。 愛人の女、北川圭子とは銀座のクラブで知り合った。まだ二十二歳と若い。今シャワーを浴びている。 煙草に火をつけ、大きく溜息をついた。(あの刑事はもう殺されただろうか?)新聞にはまだ出ていない。 コンクリ詰めで海に沈められたのなら、行方不明として大きな事件にはなるまいが、気にかかるのは院長の焔武との会談だ。 外科の売り上げが大変良く収益も素晴らしい、と褒められた。それは当然だ。 健康な患者を血液検査で引っ掛かったと嘘をつき、入院させて少しずつ毒を与え、病気にさせて要らぬ手術をし、 態とミスして殺し、健康な臓器は高値で売り捌いているのだ。 無論二人の看護士と一人の外科医師を買収しているからこそできる事だ。 帳簿の上ではあり得る程度の利益にしてあるが、 実際はその数十倍の利益が東郷と他、医師一人と看護師二人の懐へと入っている。 これで七竜会とのビジネスが成功すれば、今までの利益の数十倍の金が手に入る事になるだろう。 しかしそうなると、今までの臓器移植手術の回数が、突然かなり増える事になる。 それをどうやって誤魔化すか、悩み処だったのだ。ところが院長との話の中で、売り上げと利益率を褒められた後、 手術室の数を増やす事を告げられたのだ。 普通なら今までの回転率を考えれば、今の手術室の数のまま、回転率を上げる様にという指示が出るはずである。 ところが院長は、今の手術室の数を今までの三倍に増やす、その為に新しく外科棟を一棟増やすと言ったのだ。 しかも新しく購入する手術器具や機械等が、臓器移植手術をやる事を前提にしたラインナップになっていた。 まるで東郷がこれからやろうとしている臓器移植ビジネスの事を見越しているかの様に。
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