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出会ったのが、お見合いの席じゃなかったら、私たちはどうなっていたんだろう。
あの時、私がお試しだなんて言いださなかったら、彼は私と付き合ったのだろうか。
打算と妥協。
私にとって、恋愛なんてものは二の次で、まず結婚することが前提だった。
そのために、条件ばかり並べて、マルだのバツだのと言っていた。
それがいつの間にか、ううん、多分初めから、私は彼を好きになっていたんだ。
あの、笑顔を見た時から、きっと。
気持ちが通じ合ったはずだった。
彼は、私との将来を考えていると言ってくれた。
なのに、まだ、私たちの間に、はっきりした形がない気がする。
だから、一歩が踏み出せない。
「嘘ぉ!」
菜々美ちゃんの悲鳴に近い叫び声が、店内に響き渡る。
隣に座る加奈が、顔をしかめて少し離れた。
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