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ディスプレイを変え、入り口付近にあるテーブルも変更していた時だった。
「ねえ、お姉さん」と呼び止められる。
振り向くと、先ほどこちらを見ていた男性で、近くで見ると私よりも少し若い感じがした。
黒のチェックのシャツに白の綺麗めなハーフパンツ、皮のスニーカースリッポンという格好で服に興味があるのはひと目で分かる。
「はい」と、あえていらっしゃいませと言わず反応を待った。
場所を尋ねたいだけかもしれないし、聞くお客様はよくいらっしゃるからだ。
「あの服さあ、薄いブルーと紺どっちがいいと思う?」
その男性は向かいのメンズ店の商品を、通路を挟んで違うショップの私に指を差しながら聞いてきたのだ。
『いやいや、そこの店員に聞きなさいよ』と一瞬思ったが、お客様なので邪険にはできない。
「どちらかに着ていかれるんですか?」から始まり、合わせようと思っている色等をザッとお伺いする。
「そうですね……私だったら薄いブルーを選ぶと思います」と控えめに答えてた。
「えっ、薄いブルー?なんで?」
不思議そうに聞いてきたので仕方なく答える。
「おそらく紺はたくさんお持ちなんじゃないでしょうか?」
「――うん、持ってる」
「今回は少し雰囲気を変えたいという事でしたので、雰囲気も変わるかと思いまして」
「なるほど……」というとニコッと微笑むと黙ってメンズのお店に戻って行った。
そうして、薄いブルーのシャツを手に取りレジに向かう姿が見えた。
私の仕事は終わったので、引き続き作業に取り掛かる。
少しすると「お姉さん有難う。助かりました」と男性がお礼を言いに来られた。
「いえ、とんでもないです。素敵な見つかり良かったです」
「多分自分だったら紺を選んでたと思います。女性に選んでもらうと、新鮮でいいですね」と顔を綻ばせ、屈託のない笑顔にドキリとする。
ただ、油を売ってる訳にはいかないので「有難うございます」と会話を終えようとした。
「また選んで頂いていいですか?」と聞かれ、首を傾げたくなった「あ、はい……」と答えると男性は帰って行った。
他のお店の商品を朝から接客する体験はないので、新鮮ではあったが、まあ……程度の気軽な気持ちでサラリと忘れていた。
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