3人で歩むバージンロード

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「それでは、新婦様のご入場です」 会場からアナウンスが聞こえたと同時に、目の前の扉がパッと左右に開かれた。 スポットライトが一斉にこちらを向き、その目映さに佳奈子は思わず目を細める。 佳奈子のドレス姿を目にした招待客の、綺麗……と吐息混じりに呟く声があちらこちらから上がった。 パチパチパチ、と場内から拍手が沸き起こり、それを聞きながら佳奈子と父はゆっくりと場内を横切った。 あらかじめの打ち合わせ通り、並んでバージンロードの端に立つ。 逆光で表情はよく見えなかったが、バージンロードの中央には楓がこちらを向いて佇んでいた。 (いよいよ、だ……) 純白のバージンロードを真っ直ぐに見据え、佳奈子は深く息を吸った。 父と呼吸を合わせて、一歩を踏み出そうとする。 だが何故か、父の足が動かない。 父がコチコチに緊張してしまっているのが伝わってきて、佳奈子はつい笑みを漏らした。 (お父さんてば……) せーの、と小声で呟くと、ようやく父はぎこちなく一歩目を踏み出した。 一歩ずつ、一歩ずつ、楓に近付く度に。 父との様々な思い出が、佳奈子の胸に蘇ってきた。  
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