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気が合わなくて、どちらかというと弟の方にばかり構っていた母とは対照的に、父は佳奈子にとても甘かった。
もちろん門限を破ったりした時は厳しく叱られたが、基本は優しい父だった。
母と喧嘩をしたあと、部屋に様子を見に来て一言だけ声をかけてくれたり。
友達と旅行に行く時には、こっそりお小遣いをくれたりもした。
そして、子供が出来たから楓と結婚したいと言った時。
感情的になる二人を宥めたのも父だった。
生まれてくる子供に罪はない……あの言葉が、何度佳奈子の心を励ましてきただろう。
(………お父さん……)
腕から伝わる父の温もりが心地よくて。
自分は生まれてから今日まで、ずっとこの温もりに守られてきたのだと、改めて佳奈子は実感した。
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